信号待ち中に追突事故を起こされた場合、過失割合が10-0の事故となります。
この10-0の事故の被害者は保険会社のバックアップがないため交渉で不利になります。
損しないためにも事故が起きたときの対応方法、事故後の事後処理の流れ、損害賠償で損しないためのポイントなどを知っておきましょう。
やべくん信号待ちで停車中。
「トン」
ん?
今後ろの車ぶつかったような・・・
気のせいかな?
うーん。ま、いっか。めんどくさいし。
後日・・・。
あー! 車に傷が!
やっぱりぶつけられたんだ!
最悪・・・。もう犯人わかんないし。
ねぇ老師。信号待ち中にぶつけられたときってその場で犯人捕まえないと遅いよね?
そりゃそうだよ。その場で何もしなかったら見つかるわけないね。
やっぱりか・・・。
ぶつけられたの?
うん。最悪。
なんでそのとき呼び止めなかったの?
気のせいかと思って。あはは。
バカだねぇ
っていうか実際ぶつけられたときってどうすればいいの?
そこがいまいちわかんないからめんどくさくて・・・。
まぁこれは普段体験しないことだから知らなくてもしょうがないね。
というわけで今回は信号待ち中に後ろの車に追突されたときに損しないためにすべきことについて解説します。
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事故といえば普通はどんなに極端な事故でも過失割合は9:1や8:2になるものです。
が、信号待ちで停止中に後続車両から追突されたときは話は別で10-0の事故となります。
10-0の事故というのがちょっと特殊で、相手は保険会社が対応しますがこちらの保険会社は対応してくれません。
というのも自動車保険というのはあくまで相手に対して賠償する保険であって相手に賠償する必要のない10-0の事故のときには不要です。
そのためほとんどの保険会社は10-0の事故の被害者の代わりに相手の保険会社との交渉を代行してはくれないのです。
つまり、追突事故のような10-0の事故が発生した場合、あなたが相手の保険会社と直接交渉することになります。
相手は交渉の専門家、こちらは素人なのでうまくやらなければ丸め込まれてしまいます。
しかしあなたの保険に「弁護士特約」がついていれば弁護士を保険の範囲内で頼むことができます。
基本的に保険に関する知識のない素人がプロの保険会社相手に交渉すれば100%不利になるため、使えるなら弁護士特約を使って弁護士を依頼した方がいいです。
弁護士特約は自分が弁護士特約のある保険に加入してなくても親族が加入してれば使えるので確認しておきましょう。
また、弁護士特約を依頼するかしないかは別として、事故が起きて被害者という状況になったときに具体的にどんな行動をすべきなのかを知っておきましょう。
これを知らないといざ事故が起きたときに慌ててしまいますし、場合によっては損してしまう可能性があります。
というわけで信号待ち中にぶつけられるなどの10-0の事故が起きたときに被害者がすべきことをまとめました。
交通事故関係のトラブルで法のプロに相談したい方は日本法規情報へ。
信号待ちで追突された(10-0の事故)ときにその場ですべきこと
まず最初に事故現場で「あ! ぶつかった!」とわかったらどう行動すべきかを説明します。
- 相手を引き止める
- 車を適当なところに停めて警察を呼ぶ
- 相手に連絡先を聞く
- 保険会社に連絡する
1. 相手を引き止める
車から降りて相手に
「今ぶつかりましたよね?」
と確認します。
運転手ならほんの少しの衝突でもぶつかったことはわかるはずです。
ここではぐらかして逃げようとする人も多いのでどんなに軽い接触でも必ず相手を車から降ろして引き止めてください。
相手が知らんぷりを決め込んでても負けちゃダメです。
最悪運転席の窓をトントンしてでも降りさせましょう。
「警察呼びますね」と言って相手が応じたら駐車場など車を停めれる場所に一緒に行くように促してください。
ここで逃げられそうになったら慌てず車のナンバーを控えること。
また、警察がくるまでその場で動かないか、交通の妨げならない場所に移動すべきかについてですが、動けるなら移動した方がいいです。
信号待ちで2台の車が停まってたらめちゃめちゃ邪魔で後ろに渋滞できて迷惑ですから。
警察に現場検証してもらうためにその場にとどまるべき場合もありますが、ただの追突事故なら移動しても変わりません。
警察も動かすよう指示するのが普通です。
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2. 車を適当なところに停めて警察を呼ぶ
どんなに軽い事故でも警察を呼んで現場を確認してもらいます。
警察がきて初めてそこで事故があったことが証明されるのです。
悪質な人の場合、警察の事故証明がないことを理由に「証拠がない」といってしらばっくれる人もいます。
そうなったら最悪泣き寝入りになって損しますし、仮に捕まえたとしても確実に揉めます。
そうならないためには警察を呼ぶことは絶対です。マストです。
またたまにこちらは完全に停まっていたのに「動いてた」と主張して10-0の事故の過失割合を無理やり9:1や8:2にしようと警察に交渉するクソヤローもいたりするので気を付けてください。
10-0か9:1かでは受け取れる補償額が大きく違ってきますので絶対に応じてはいけません。
また、人によっては免停になるのが嫌だからなどの理由で「警察は呼ばないでくれ」と懇願してくる人もいます。
特にタクシー運転手やトラック運転手は免停になると非常に困る&会社的にもまずいことがあり、懇願してくる人が多いです。
しかし彼らの話に簡単に乗ってはいけません。
なぜなら警察を呼ばないと事故証明が取れず、事故証明が取れなければ保険が降りないからです。
相手が保険以上の損害賠償金を直接払ってくれるならわかりますが、大抵は保険でもらえる金額の方が圧倒的に多くなるので、どんなに情を迫られても応じてはいけません。
個人同士のやり取りになると払うと言っておいて連絡がつかなくなるのも怖いですし。
というわけで事故加害者からの「警察呼ばないでくれ」というお願いは心を鬼にして突っぱね、警察を呼ぶことが重要なのです。
3. 相手に連絡先を聞く
警察を呼んだら警察が到着するまでの間に相手と連絡先を交換しておきます。
最低限聞き出すべき連絡先
- 相手の氏名
- 相手の電話番号
- 相手の車のナンバー
- 相手が加入してる任意保険の保険会社
最悪氏名と電話番号だけでも事足りますが、相手が嘘を言う可能性もあるので以上の4つは全部メモしておいた方がいいです。
また、昔は事故に遭ったら相手の免許証を見せてもらうのが普通でしたが、今は個人情報の塊である免許証は見せたがらない人もいます。
なので臨機応変に対応しましょう。
ちなみに警察に事故証明を取ってもらうのであれば相手の氏名や住所は警察に聞けば教えてもらえるのであえて聞かなくても大丈夫といえば大丈夫です。
3. 保険会社に連絡する
次に保険会社に連絡します。
先に述べた通り10-0の事故で被害者の場合、保険会社は対応してくれないことが多いです。でも協力はしてくれる会社もあるので連絡はしておきましょう。
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事故後の流れ
では次に事故の現場処理が終わったあとにやることについて解説します。
車の修理について
- 見積もりをとる
- 見積もりの金額を相手に伝える
- 修理を着工する
車の修理についてですが、まずディーラーで見積もりを取ってもらいます。
その後必ず相手にその見積もり額を伝えてください。
事故を起こした相手が見積もりを見て保険を使うか使わないかの判断をします。(修理金額が少ない場合、保険を使って等級が下がるより使わないで自腹の方がいいと考える人もいる)
相手が保険を使わない場合、こちらで修理代金を立て替えて修理し、後日相手にその金額を請求します。
相手が保険を使う場合、修理代金はディーラーから保険会社に請求し、保険会社が支払います。
代車が必要な場合
代車代は相手の保険会社持ちになります。
修理費用が車の時価額よりも高くなった場合
車の時価額とは今のあなたの車の状態とまったく同じ年式、グレード、同等の状態の車を買うと仮定したときにかかる金額のことです。
相手の保険会社からは車の時価額の分しか支払われません。
もし修理した場合、差額は自腹で修理するか、保険会社を通さずに相手に直接請求するしかありません。
が、普通このケースは自己負担で済ませます。
これは自分が加害者側の立場に立ったときにおんぼろの車にぶつけてしまったとして、相手から「新車代よこせ」と言われて納得できますかって考えたら仕方のないことだとわかると思います。
【注意】見積もりを相手に見せるまで修理を着工してはいけない
相手の保険会社が修理前の車を確認しにくることがあります。
これは
- 本当に事故で損害を受けた部分の修理なのか?
- 本当に必要な修理なのか?
を確かめるためです。
勝手に修理してしまうと、正当な事故による損傷の修理として認められず、保険金を出すことを渋られることがあります。
相手の保険会社は修理代を安く抑えたいため、こちらが必要以上の修理をしていないか、事故以前にあった傷まで直そうとしてないかなどを気にしてるんです。
しかしこれは考えてみれば当たり前のこと。
あなたは自分のお金で車を修理するわけじゃありません。
人のお金で修理するんです。
なのにお金を払う人に対してなんの断りもなしに勝手に修理を始めてしまうのはいくら事故の被害者といえど非常識です。
必要最低限のマナーと言えるでしょう。
あなただって自分が加害者になってしまったとき相手がこちらの知らないところで勝手に修理して「はいこれ修理代よろしくね」って言われたら怒りますよね?
見積もり内容を見せなければ事故が原因ではない古傷の修理などいくらでもできてしまいます。
だから修理に着工する前に見積もり金額とその内訳を相手に伝えることは義務だと思ってやってください。
でないと確実に揉める原因になりでしょう。
病院について
次に病院について。
追突事故の被害者はむち打ち症状が出る場合が多いです。
事故後の病院への行き方、お金の支払いについて知っておきましょう。
体に異常がある場合は病院に行く
もし体に異常があればすぐに病院に行って医師の診断を受けましょう。
事故が原因の怪我なら人身事故扱いになります。
事故直後は特に異常がない場合でも3日後くらいに首に違和感を感じるケースが多いです。
なのでしばらく様子を見ましょう。
また、3日経っても何の異常もなかった場合でも一度は検査のために病院に行った方がいいでしょう。
ちなみに仕事に復帰するかどうかは慰謝料には影響しません。
が、仕事を休む場合は休業損害として保証を受けれます。
交通事故でも健康保険は使えるのか?
交通事故の場合、健康保険は使えないと言われていますがこれは本当なのでしょうか?
調べてみたところ、以下のケースでは健康保険が適用されないとのこと。
- 業務上の災害
- 法律違反による負傷
- 第三者の行為による負傷
交通事故は第三者の行為による負傷に当てはまりますね。
しかし、よくよく調べてみると
「犯罪や自動車事故の被害を受けたことにより生じた傷病は、医療保険各法(健康保険法、船員保険法、国民健康保険法および高齢者の医療の確保に関する法律において、一般の保険事故と同様に、医療保険の対象とされています)
参考:厚生労働省 保保発0909第3号
厚生労働省がこのように明言しているため、交通事故でも健康保険は使える、というのが正しいはずです。
したがって基本的に病院で健康保険を使いたい旨を申し出れば病院側は断れません。
しかしこれも健康保険が治療費を負担するわけではなく、最終的には加害者の保険会社が治療費を負担します。
健康保険はあくまで立て替えるだけのようです。
また、健康保険で治療を受けて後から相手の保険会社に請求してもらうようにするには怪我が事故によるものであることを証明するため、病院に「第三者行為による傷病届」を提出する必要があります。
被害者は病院で治療費を払う必要があるか?
基本的に10-0の事故の被害者は病院の窓口で治療費を払う必要はありません。
相手の保険会社が負担してくれます。
つまり相手の保険会社は窓口で3割のお金を負担し、かつ健康保険によって立て替えられた残りの7割も最終的には負担します。
なので健康保険を使おうが使わかろうが結局加害者の保険会社が全額負担することには変わりないですね。
じゃあ別に健康保険使う必要ないんじゃって思うかもしれませんが、使った方がいいです。
なぜなら、相手の保険会社が治療費を全額保証してくれるとは限らないからです。
相手の保険会社も適切な治療かどうか、というのはチェックしてます。
保険を使わない、ということは自由診療になりますが、自由診療であることをいいことに、必要以上の治療をしてしまうと保険が降りない可能性があります。
また単純に治療費がかかりすぎて保険で支払われる上限を超えてしまうこともあります。
こうなると最終的に一部の治療費が自腹になってしまう可能性があるんです。
こういったリスクを回避するためにも、健康保険は使えるなら使っておいた方がいいです。
もし使えないと言われたら他の病院に行くことも検討してみましょう。
また、加害者の保険会社によりますが、事故当日一番最初に病院に行ったときはまだ必要な手続きが行われてないため、治療費はこちらで立て替えになることが多いです。
が、大体事故の翌日以降は相手の保険会社の立て替えとなり、初日に払ったお金もすぐ戻ってきます。
加害者に物損扱いにしてくれと言われたら?
交通事故には2種類あります。
人身事故・・・人が何らかの被害を受けた事故
ですが、信号待ちで追突された事故の場合、どちらにもなり得ます。
決め手は「被害者であるあなたが怪我をしたかどうか」です。
ただし、追突事故の場合、その場ではなんともなくても、後日症状が出ることが多いです。
その場合、警察がきたときに「とりあえず物損で処理しておきますね」となるケースが多いです。
それでその後なんともなければいいんですが、問題は後日首に痛みが出たり、頭痛がした場合ですね。
その傷病の原因が事故なら人身事故として扱う必要があります。
厳密には物損のままでもいいんですが、それだとあなたが損します。
というのも人身事故と物損事故では、被害者が受け取れる補償額が大きく違ってくるからです。
まず人身事故被害者は最大120万補償される自賠責保険が適用されます。そのため治療費、通院費、慰謝料などが補償されます。
しかし物損事故の場合、基本的に補償されるのは車の修理代のみ。
物損でも一応最初に病院に行ったときの検査代など最低限の治療費は出ますが慰謝料は出ませんし、休業補償や後遺症補償などは出ません。
そのため物損か人身かでは人にかかった治療費諸々についてはかなりの金額が変わってきてしまいます。
しかし加害者および加害者の保険会社はできる限り人身事故でなく物損事故で処理したがります。
なぜなら、加害者にとっては物損で済めば
- 補償額が圧倒的に少なくて済む
- 加害者にペナルティがなくて済む
そのため、あなたが無知であればあるほど加害者の保険会社は「物損でも治療費は変わりませんよ」などといって物損事故のままで済ませようと誘導してきます。
この誘導に乗ってはいけません。
この誘導に乗って物損にすればあなたはほぼ確実に損します。
確かに加害者にとっては物損で済んだ方が楽ですが、被害者にとっては物損か人身かでもらえるお金が大きく違ってしまうため、たとえ加害者がどんなにいい人でも迷ってる場合じゃありません。
もし怪我をしたのであれば問答無用で人身事故にしてください。
物損にしてしまうと何十万単位で損します。
あとから人身事故扱いにするには?
さて。病院で治療を行った場合、仮に事故現場ではいったん物損事故として処理された場合でも病院でもらった診断書を事故処理した警察に提出することによって物損事故から人身事故に切り替えが可能です。
ただしこの診断書は原因が交通事故にあることを医者が明言してる必要があります。
また、診断書の提出先は最寄りの警察署ではなく、事故現場の管轄の警察署の事故の担当者に直接渡さなければなりません。
事故現場が遠い場合はちょっとめんどうですが、事前にアポを取って行くようにしましょう。
10-0の事故の被害者が請求できる費用は?
最後に気になる10-0の事故の被害者が請求できる費用について解説します。
被害者が請求できるのは主に
- 車の修理費
- 代車費
- 治療費
- 病院までの交通費
- 休業補償
- 慰謝料
自賠責保険により最高120万まで支払われます。
また慰謝料は通院日数と密接に関係していて
通院日数 x 8400円
で計算して少ない方の金額が下ります。
例えば3回しか通院しなかったら8400 x 3 = 25200円しか出ませんが90回通院すれば756000円もらえます。
そのため、事故に遭った人はできるだけ通院期間を長くし、かつ高い頻度で通院した方が得する仕組みになっています。
また治療しても後遺症が残ったときにもらえる後遺障害補償が出ると追加で70万もらえます。
慰謝料が支払われるタイミングは?
慰謝料は治療が終わったあとに示談により支払われます。
- 治療が終わったらまず相手の保険会社に連絡
- 相手の保険会社が慰謝料を提示
- その金額に納得がいけば示談書にサインして慰謝料を受け取る
という流れです。
納得がいかない場合は弁護士を頼むか後遺症認定を受けるしかありません。
ただ弁護士は頼むのにもお金がかかりますし、それで示談金が増えたとしても弁護士に払う費用で相殺されてしまいます。
後遺症認定はもちろん医者が後遺症と認めてくれなければ受けれません。
交通事故を起因とした治る見込みのない傷病と診断してもらい、それを証明する診断書を書いてもらう必要があります。
追突事故で一番多いむち打ちは基本的には治る怪我です。
なので後遺障害認定は受けれないのが普通ですが、受けれてる人もいるので本当に治りそうにないなら医者に相談する価値はあるかもしれません。
ちなみに一番等級の低い後遺障害14級で慰謝料が最低でも32万増え、弁護士基準だと110万増えます。
交通事故関係のトラブルで法のプロに相談したい方は日本法規情報へ。
まとめ
- 信号待ちで追突された事故はこちらに過失がないため、10-0の事故として扱われる
- 10-0の事故の被害者になった場合、自分の保険会社は基本対応してくれず、相手の保険会社と直接やりとりすることになるため、交渉で不利になりやすい
- 信号待ち中で追突事故を起こされたときはまず被害者を捕まえ、警察を呼び、加害者から連絡先を聞き出し、保険会社に連絡する
- 車を修理するときは見積もりを取り、必ず着工する前に加害者に見積もりを見せる
- 体に異常がある場合は病院に行き、治療が必要なら事故による傷病だと証明できる診断書をもらって警察に提出することで物損事故から人身事故に切り替えられる
- 物損事故と人身事故では得られる補償額が大きく変わるため、被害者は人身事故にする方向で考えるべき
- 10-0の事故の被害者は車の修理費や怪我の治療費の他に、慰謝料や休業補償も受けれる
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